ライプツィヒ&ドレスデン旅日記:11月7日
朝、目が覚めたら、9時を過ぎていた。疲れて熟睡したのか、目覚ましのアラームも聴こえなかったようだ。危うく寝過ごすところだった。慌てて身繕いをして、朝食を食べにレストランへ下りてみると、どこに泊まっていたのかと思うくらいたくさんの人がビュッフェに群がっている。あまり時間がないので、簡単に取れそうなものだけ取って空いた席を確保した。日本の大きなホテルのようだ。何の気なしに皿に載せたドレスデン名物のアイアーシェッケ(卵をたっぷり使ったケーキ)は、まあまあ美味しかったが、アメリカのホテル・チェーンのせいかコーヒーが薄い。日曜の朝ということもあり、皆ゆっくりと朝食を食べている。
いそいそと食べ終えて荷造りをし、チェック・アウトしようとすると、これも案の定時間がかかった。出る時間というのは重なるものである。冷たい雨のなか、急いでゼンパーオーパーへ向かい、ロッシーニの『アルジェのイタリア女』を見る。ペーア・ボイゼンの演出は、コミカルであるに徹した今ひとつインパクトに欠けたもの。観光客の眼差しとして浅薄化したオリエンタリズムとそれを内面化した現地住民の虚無性をよく表現していたが、アルジェという地名から喚起されたモティーフは見当たらない。とはいえ、ヘンドリック・ナーナシという若い指揮者の作る音楽がなかなか生き生きとしているし、何よりも歌手たちが粒ぞろいだったので、楽しんで聴くことができた。この劇場には珍しく半分くらいの入りだったが、聴衆も全般的に喜んでいたようだった。歌手のなかでは、リンドーロを歌ったテノールのハビエル・カマレーナの声がとくに素晴らしく、大きな喝采を受けていた。久しぶりに輝かしい声のテノールを聴いた気がする。最近評判のロランド・ビリャソンと同じメキシコ出身とのこと。
オペラが昼過ぎに跳ねた後、ここも最近改装なったアルベルティーヌムを訪れる。ここに所蔵されているフリードリヒの絵は素晴らしく、それを楽しみに訪れた。有名な「山上の十字架」もさることながら、夕暮れ時の港の風景の静かな美しさも魅力的。墓地の絵は、ライスダールの「ユダヤ人墓地」と並べて考察してみたいと思った。
フリードリヒ以外では、キルヒナーの二人の裸婦の像やクレーの小さな作品が美しい。オットー・ディクスの「戦争」祭壇は何度見ても衝撃的である。今回はリヒターの絵画作品にも惹かれた。と、絵に見入っているうちに空港へ行く時間が迫って来た。彫刻なども見たかったが、今回はあきらめることにする。ホテルで荷物を引き取って新市街駅へ向かう。小腹が空いたので、駅構内のスタンドでカリーヴルスト(乱切りのソーセージにスパイシーなケチャップ・ソースをかけ、さらにカレー粉をかけたもの)を食べて、空港行きのSバーンに乗り込んだ。
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