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ベルリン旅日記(2010年1月8日)

 朝食を済ませて外に出てみるとやはり非常に寒い。ホテルからツォー駅まで歩くが、雪が踏み固められて凍りついた足下が滑りやすいので、おそらく普段の倍近く時間がかかってしまう。ツォー駅からSバーンで中央駅まで行って降り立つと、歩く人が少ないせいか、歩道がさらに雪深い。そのような道をしばらく歩いて、ヴァルター・ベンヤミン・アルヒーフへ向かう。見ればシュプレーの河面もところどころ凍っている。このような気候は、ポツダムが最も寒かったとき以来だろうか。
 ヴァルター・ベンヤミン・アルヒーフに着くと、訪問申し込みのメールに返事をくれた職員の方が温かく迎えてくれた。会議中にもかかわらず、少し時間を割いてデータベースの使い方を説明してくれる。備え付けのコンピューターには、全集、書簡全集、自筆の草稿、関連の資料の類がすべてPDFのファイルで収められていて、これを自由に見られるという仕組み。全集各巻の巻末に関連資料として収録されている手書きの草稿のもとの姿は、じかに眼にする機会の少ないものだし、それがさらに現在刊行中の新全集の基になっているだけに非常に興味深いが、やはりなかなか判読は困難。それでも、晩年の歴史哲学に関する草稿を見てみると、他人からの手紙の便箋の裏側などにびっしりと書き込まれている。書くことすらもきわめて困難な状況のなかで、最終的に「歴史の概念について」の20のテーゼに結晶する思想が紡ぎ出されていたことが偲ばれる。
 アルヒーフにはベンヤミンに関する研究書の類も集められていて、日本にいてはなかなか現物に触れることのできない二次文献も手に取ることができる。主にドイツ語にものだが、これほど多くの研究書がベンヤミンについて書かれているのかとあらためて驚かされる。そのいくつかを手に取って拾い読みしたり、全集のデータベースで検索をかけたりしてみた。ベンヤミンの全集は、アドルノの全集のようにデータベースが市販されていないので、ここのコンピューターを使えることは、行く行くは便利にちがいない。それと持ち込んだパソコンとを使いながら、これから書く原稿の構想を練って午後まで過ごす。そうこうするうち、何人もの人が閲覧室に入ってきて、それぞれ机に陣取って仕事に取り組んでいる。ベンヤミン研究の相変わらずの活況を示しているのだろうか。
 アルヒーフを辞して宿に戻ろうとすると、職員の方が呼び止めて、日本語の訳書をはじめダブって在庫のある書籍があるから持って行かないか、とのこと。ありがたい申し出なので倉庫へ連れて行ってもらうと、これまた膨大な在庫。そのなかの一角にそうした書籍があったが、残念ながらほとんど手許にあるものばかり。テーマごとのアンソロジーは持っていなかったので、それだけ少しもらって行く。アルヒーフを使わせてもらったうえにお土産までいただいた格好で恐縮なことだ。ともあれ、今後の研究滞在で使わせてもらうのにもよいきっかけになったのではないだろうか。
 宿へ帰って友人と落ち合い、書店を案内してもらう。連れて行ってもらった近くの店は、思想と文学を専門とする書店で、狭いながらも非常に充実した品揃え。店の主人に、ベンヤミン・アルヒーフで面白く思った一冊の研究書のことを尋ねると、現在在庫はないが、注文すれば明日の朝には届くという。ドイツの書籍流通のシステムの便利さにも驚かされる。それを注文して、明日他の書籍と一緒に引き取ることにした。
 大きな書店に寄って新刊をひと通り見て回った後、シュヴァーベン地方の料理を出すレストランで夕食。シュペツレという当地のパスタを七面鳥の肉やチーズと一緒にグラタン風に焼いた料理をリースリングの赤とともに。朝食の後何も食べていないので、熱いソースが腹に浸みる。さまざまな話に花が咲いて、閉店まで居座ってしまった。帰り道にはさらにうっすらと雪が降り積もっていた。

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