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ヴァイマール、ベルリン、クラクフ旅日記V

 ホテルをチェック・アウトして、昼過ぎのクラクフ行きのフライトのためにテーゲル空港へ向かう。オリヴァー・プラッツは、空港行きの109番のバスが通るし、他にもかなりの数のメトロバスが通るので、意外に便利かもしれない。クラクフ行きのフライトは、エア・ベルリン。どこにチェックイン・カウンターがあるのかと思ったら、Cブロックという離れのような建物にカウンターがあった。メイン・ビルディングと高低差があるので、荷物が多いとやや不便。バスで運ばれた先に待っていたのはプロペラ機で少々不安になったが、さほど揺れることもなく1時間強でクラクフに到着。さっそく必要な現金を引き出そうとキャッシュ・ディスペンサーへ急いだが、空港の到着口付近の機械がどれもうまく使えず、結局手持ちの50ユーロをポーランドの通貨ズロチに両替することになる。185ズロチというのは良いレートなのかどうかはわからない。ともかく、いくつかあった空港の両替商の窓口にあったレートのなかでは良いほうだろう。あまり考えないことにして、自動販売機で中央駅までの電車の切符を買い、空港巡回バスで電車の駅まで乗せてもらう。着いたのはかなり寂れた、朽ちかけた屋根の待合所が雑草に囲われたホームにあるだけの駅で、これにも不安にさせられたが、ほどなくして不釣り合いに新しい電車がやって来た。15分ほどでクラクフの中央駅に到着。
 駅の地下道を抜けて駅前の広場に出ると、通りの向こうには、世界遺産に指定されているクラクフの旧市街が広がっている。確かに美しい街並みだ。ともかくホテルに入ろうと、駅の反対側の通りへ出ようとするが、歩行者の通り道がなかなか見あたらない。しばらくして、スロープで通じている地下道を通って路面電車の線路と車道を横断できることがわかった。地下道にはあちこちに物売りが立っている。
 アレクサンダーIIという名前のホテルは、駅からほど近い路地の奥にあって、怪しげな英語を話す小太りのおじさんが迎えてくれた。最上階のサン・ルーフのある部屋に通されたが、どうやっても電灯が点かない。おじさんに来てもらってあれこれ試したが直らず、結局一つ下の階の部屋に替えてもらった。天井の高い広々とした部屋で、少々贅沢な気分にさせられるが、ほどなくして部屋が鉄道の線路に面していることがわかる。電車が通るとそれなりに騒音がする。電車がそう頻繁には通らないのがせめてもの救いか。インターネットへの接続はLANケーブルによるもので、回線の状態はかなり良い。スカイプで4日ぶりに妻と話すことができた。
 ひと休みしてクラクフの街へ出てみる。まず、翌日のオシフィエンチム行きのバスが出るターミナルの場所を確かめようと、駅へ戻ってみる。駅舎のある反対側に、広島のバスセンターに似たようなバスターミナルがあった。再び地下道を通って駅の正面口に戻るが、その途中の至る所で、ドイツのブレーツェルをひと回り大きくしたようなパンを売っている。値段は安いもので1ズロチというから、日本円にして30円足らずか。試しに一つ買い求めてみた。列車の車中で読むために、ということだろうか。小説の古本を売る店がいくつも立ち並んでいるのも面白い。
 ウェブ・サイトの情報によれば、カジミエーシュ地区にあるガリシア・ユダヤ博物館が19時まで開いていて、19時半からはそこでヘンデルのオペラの公演があるとのこと。キオスクで市内交通の切符を買って、路面電車でカジミエーシュ地区へ向かう。路面電車は、プラハの街で見かけたの同じような型で親しみが持てる。一つ手前の停留所で降りてしまったようで、道に迷いかけたが、しばらく南へ歩いているうちに、カジミエーシュ地区への入り口に行き当たった。ユダヤ料理を出す店をはじめ、いくつもの飲食店が屋外に席を並べていて、かなりの数の観光客がそこでくつろいでいる。それを横目にさらに歩き、別の通りに出ると、かつてのゲットーがあった一角から少し外れたところにガリシア・ユダヤ博物館が見つかった。掲示を見ると、開館は18時までとあり、ウェブ・サイトの情報と違う。カウンターの女性に話を聞くと、実際もうすぐ閉館で、オペラ公演の準備をしなければならないとのこと。どうしたものかといったん外に出て、帰りの電車の時間を調べてみたら、22時過ぎまでしかない。もしオペラ公演が休憩も含めて3時間以上かかったとしたら、電車に間に合わないことになる。中央駅まで歩けない距離ではないし、タクシーを使う手もあるが、慣れない夜道を歩くのは危険だし、流しのタクシーを拾うのはリスクが高い。オペラを観るのも諦めて、再び電車で中心街へ戻ることにする。
 歩き回って腹が減ってきたので、買っておいたパンをかじってみる。これが相当に固い。なかなか噛み切れず、しばらくかじっているうちに顎が痛くなってしまった。路面電車に乗って、中央駅の一つ先の停留所で降り、厳めしいフロリアンスカ門を通ると、クラクフの旧市街が広がっている。マリア教会の横を通って織物会館の前の広場に出ると、ここでもたくさんの飲食店が屋外に席を並べている。それを冷やかしながら歩いて、目に付いたメニューを覗いてみると、これが結構な値段だ。まともな食事を一皿頼んだら、千円は下らないというところか。それ以外はテイク・アウトのファストフードという感じで、観光客ずれした街の空気を感じないではいられない。ちなみに、トルコ人のケバブ屋もあちこちに店を構えている。
 夜の旧市街に馴染めないまま、いったんホテルに戻ろうと歩いているうちに、駅のすぐ前にあるホテルのレストランが目に入った。メニューを見ると、旧市街の観光客相手の店に比べてずっとリーズナブルな値段。今日の夕食はここと決めて入ってみると、妙に英語の上手いおじさんが応対してくれた。薄暗いなかに使い込まれた木製のテーブルが並ぶ寂しげな雰囲気のなかで、二つもあるテレビが妙に明るい。一方のテレビではニュースを流していて、ドイツの総選挙でメルケル首相の率いる同盟が勝利を収め、社会民主党が歴史的な敗北を喫したこと、映画監督のロマン・ポランスキーが、30年前の少女暴行の容疑で逮捕されたことなどを報じていた。なかでもポランスキーの逮捕はポーランド人にとって衝撃的なニュースのようで、翌日の新聞はどれも一面でそのことを報じていた。もう一方のテレビに流れているのは、ポーランドのダンス・コンテストの番組。若い男女のペアが次々に出てきては踊って、これを審査員が講評するというもの。飲みに来ているカウンターの客の一人も席を立って、合わせて踊ったところを見ると、ポーランドではこの手の社交ダンスがポピュラーなのかもしれない。
 ところで、このバーともレストランとも点かない店で注文したのは、ポテトケーキにハンガリーのグラーシュをかけた一皿。少しスパイシーなグラーシュも、表面をかりっと焼いたポテトケーキも悪くない。ヴィーンやプラハでもそうだが、グラーシュを注文するとおおむね間違いはないようだ。飲み応えのあるビールと一緒に食べているうち、すっかり腹一杯になってしまった。これまでの旅の疲れもあって、ホテルに帰ってシャワーを浴びると、すぐに眠くなってしまう。

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