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三宮の中華料理と明石の「玉子焼」

 先にこの欄に、神戸の兵庫県立美術館へ「アムステルダム国立美術館展──オランダ絵画の黄金時代」を見に行った印象を記したが、その際広島から車で泊まりがけで出かけたので、見に行く前の日の夜に三宮で夕食をとることになった。神戸に来たからといって神戸牛だのハイカラな洋食だのに一見の旅行客が手を出したら、値の高いものをつかまされるにちがいないと踏んで、中華料理を試すことにする。神戸には中華街もあるし、それなりに美味しい中華料理屋があるのでは、と思ったわけである。
 そこで入ってみたのが、三宮の東急ハンズに隣接するビルの6階にある「酔坊」なる「中華居酒屋」。店の内部をのぞくことのできないドアを開けて入らなければならないので、敷き居をまたぐのに少し勇気が要ったが、入ってみると中華料理店らしい赤を基調とした装飾豊かな空間が広がっている。とはいえ、派手過ぎることはなく、どちらかというと中華料理店にしては落ち着いた感じ。しかし、「居酒屋」でもあるのは確かのようで、奥の席ではサラリーマンのグループがビールをあおりながら気炎を上げていた。
 お世辞にも愛想がよいとは言えない中国人女性が料理を運んでくれたが、その料理、手ごろな値段(300円足らずの点心から一品料理がある)のわりにはなかなか美味しい。小籠包、鳥肉のカシューナッツ炒め、五目おこげに、(すでに味噌をつけて葱と巻いてある)北京ダックといったところを妻と食べたが、とくにおこげは具が豊富なうえにしっかりとした味付けで気に入った。鳥肉の炒め物も唐辛子の辛味が軽いアクセントとして利いていて、なかなかの味。ニンニクの効いたこの一皿を食しながら、かつて大学の学生食堂で食べたこの料理を思い出した。貧乏学生だったころ、アルバイトの給料が入ったりすると、学生食堂の夜のメニューにある(750円と学食メニューにしてはかなり高い値のついていた)「鳥肉のカシューナッツ炒め定食」を食べていたものである。そう言えば、学食のもかなりニンニクが効いていた。ちなみに小籠包も美味しかったが、「北京ダック」に関しては、この値段でそう贅沢は言えない、というのが結論である。
 さて、神戸からの帰り道に、明石に寄って「明石焼」を食べてみた。玉子の多い生地をたこ焼きのように焼くこの「明石焼」を当地では「玉子焼」と呼ぶようで、今回入った「松竹」という店は「玉子焼専門店」とのことである。明石駅前のあけぼの商店街という商店街のなかにある、こぢんまりとしたお店。
 店に入ると、この「玉子焼」の焼き方にまず驚かされた。羽子板のような鉄板にたこ焼き器のようなくぼみがついていて、そこに相当柔らかい生地を流し込み、片面が適当に焼けたところで、何と菜箸でさっと返すのである。生地が柔らかいと、串や千枚通しよりも箸のほうがひっくり返しやすいのだろう。そうしてしばらくすると、やおら「羽子板」の柄をもって、焼けた「玉子焼」を下駄のような朱塗りの板にバタンと落とすのである。その朱塗りの板、下駄の歯が片方しかなくてすこぶる不安定ではあるが、板を手前に傾けると食べやすいようにできている。
 この「玉子焼」、よく知られているように、ソースではなく、薄味の出し汁をつけて食べるが、この店の薬味は三つ葉。これにも何か理由があるのだろうか。出し汁をつけなくても十分に美味しいが、つけたほうが生地のまろやかさが際立つ感じ。ふんわりとした生地の食感と蛸のこりこりとした食感のコントラストを楽しんだ。

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